ハーブや園芸に関すること

見果てぬ夢か 〜 無農薬

無農薬栽培。憧れかもしれないし、無理な挑戦かもしれない。農薬を使うこと自体の善悪はここでは論じないこととしよう。病虫害を避けられない園芸植物もあるだろう。無農薬では成立しない経済的な問題もあるだろう。用法・用量を正しく扱えば、残留農薬の問題は科学的に解決されているわけだし、適切な使用を前提としなければ我々人類は生きていけないのかもしれない。そういう話は重要なことだけれど、今それをここで語ることはしないでおこう。

無農薬栽培。正直に言っておこう。私はそれを目指しているわけではない。我が家にはオルトランもベナポンもカダンもある。使う目的で買った物だ。そして今でも、もしかしたら期限が切れているかもしれないけれど、それを封印してしまった訳ではない。たまたまそれはカモマイルを育てていて起こったことだった。まさにびっしりとアブラムシが付き、駆除も追いつかなくなったとき、殺虫薬を使ったのだ。正しく目覚しいほどの効果を示し、アブラムシはいなくなった。気分が悪くなるような風景はあっさりと姿を消し、すっきりとしたカモマイル達が戻ってきた。私は嬉しくなり、そして、アブラムシがいた頃以上に触ることが恐くなった。カモマイルにも私自身にも何も影響はなく、ただ、私は徐々に農薬を使わなくなった。理由があったといえばあったのだろう。けれど、信じて欲しい。その時は、理由なんか考えもせず、自分がやったことを自分で嫌いになっただけだ。

私自身がハーブを育てているのは、育てる事自体がある意味目的であるのだ。香りを楽しみもするし、食べもする。写真を撮るのも大好きだ。それでも、一番の目的は育てることそのものにある。そしてある時気づいたことがあった。たかがそれだけのために、なんでわざわざ薬を撒かなければならないのだ。薬を撒くために種を蒔き苗に水を与えるのか。否。だったらもっと楽しむ方法を見つければいい。では、無農薬を目的とするのか。そんなに立派なことも、私の目的ではない。もっとずるく楽しむ方法を見つけようじゃないか。自分が満足できるやり方で、自分が楽しめることであればいいのだ。

其の壱。虫が付くような植物は扱わない。多分地域差とか環境とかがあるのだろうから、我が家の場合に限るのだけれど、色々やっているうちに虫が付き易い植物と、虫が付きにくい植物が見えてきた。カモマイルはアブラムシが付くから駄目。コットンと紫蘇は夜盗虫にあらかた食われてしまうから駄目。ラベンダー、ローズマリー、センテッドゼラニウム、ほとんど虫が付かないからok。新しい苗に挑戦し、虫が付いたら諦める。消極的なことを積極的にやる。虫のために育てている訳でもないのだからね。

其の弐。虫にくれてやる。バジルには必ず夜盗虫が付く。できるだけ手で駆除するけれど、無限にわいてくる。実際奴等は地中からこれでもかこれでもかと発生するんじゃないかと思う。敵が物量作戦で来るのならこちらもそれで対抗する。無限に発生してくるのなら無限に植えてやろうじゃないか。およそ20本も育ててやれば、無傷の葉も自分で欲しいくらいには収穫できる。奴等を許す気なんかさらさらないし、共存共栄なんか真っ平御免だけど、こんな方法でも満足はできている。

其の参。農薬以外の方法。まず水。アブラムシとかの大抵の虫は洗い流してしまう。しぶとい奴等だからそれなりに構えていかないといけないし、植物にも多少のダメージもあるけど、虫にやられるよりはマシだろうと考えている。水中に漬け込んでも平気で歩いているのだから、洗い流すのが一番。鉢植えに夜盗虫が発生したときは、たっぷりと水を与えながら、土の表面を箸か何かで少しほじくってやると動いているのが見えてくる。そこでつまんで駆除する。水をやり過ぎると用度の団粒構造が崩れてしまうらしい。つまり水が通る経路ができてしまい、保水性が損なわれるらしい。これもまあ、虫にやられるよりはマシだろう。

其の四。農薬に代わるもの。まずは牛乳。皮膚呼吸をする虫達に対し、牛乳の皮膜で覆って呼吸困難に陥れるという方法だ。植物の気孔もふさぐことになるから、息を止める競争になる。真水で洗い流してやらねばならないし、何だか臭くなるのも困るし、固まってこびりついたアブラムシもかなり嫌な感じなんだけど。木酢液は、炭を焼く時の副産物。質の悪いものは発癌性物質であるタールが多く含まれるとのことで、良質のものを探し出して使わなければならないのだそうだ。見ても判別できないから少々厄介かも。煙草を水に浸した液も害虫駆除には効果があるらしいが、それこそニコチンとタールが含まれるわけで、これもどうかと思う。そして石鹸。合成洗剤ではなく、純粋な石鹸のことだ。水をはじく虫の皮膚に対して、石鹸水は浸透していき、呼吸困難にする。つまり、溺れさせることになる。これは劇的な効果を示すんだけど、植物へのダメージも小さくはない。これのミソは、石鹸はいずれ分解されるため、環境に与える影響が小さいということだけ。結局あんまり勧められない。最終兵器というところ。でも、やるときはやるぜ。

其の伍。天敵を使う。アブラムシに対してのテントウムシ。七匹放ったテントウムシの幼虫は、さらにその天敵にやられて数が減り、そして結局アブラムシの増殖には追い付かなかった。難しいもんだ。本格的な天敵農法は、メインの作物の前に同じ害虫が付く植物を植えることから始めるらしい。これによって害虫を魅き寄せ、そして天敵を誘導する。バランスが取れた頃にメインの作物を植え付け、害虫の犠牲が及ばないようにするんだそうだ。ただでさえ危ういバランス。近隣で農薬を使えばそれも崩れていく。不自然な畑の中に不自然な食物連鎖を形成する試み。簡単に出来ることではないけれど、何かが学べるようにも思うのは、気のせいだろうか。

無農薬はきっとすごくいい事なんだろうと思う。いや、信じている。そして、農薬は必要悪なんだろうと思う。いや、考えている。自分にとって関係の無い話ではない。どちらがいいかは相変わらず解らないし、これからも解らないような気がする。自分でやりたいことを自分なりの方法でやっていく。そしてたまたま、埃をかぶった農薬がそこにある。私がやりたいことに関して、きっとそれは要らない物だったのだろう。

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