ハーブと花の写真講座

絞りと被写界深度

絞りというのは被写界深度にかかわってきます。絞り込めば被写界深度が深くなり、近いものから遠いものまでピントが合い易くなり、逆に絞りを開けていくと被写界深度は浅くなり、ピントが合った対象物からずれたものはボケて写ります。この現象を積極的に活用することで、背景をぼかし、被写体を浮き上がらせることができます。
精密な言い方をするならば、絞り込むことにより「ピントが合ったように見える」範囲が広くなるということです。フィルム(もしくはイメージャ)と絞りとの関係でボケ方が変化します。フィルムも絞りも大きいほどボケ易いと言えましょう。絞りはレンズの開口部(光が入る範囲)を意味するものでもあります。小型のコンパクトカメラや、携帯電話のカメラでは、被写界深度を浅くするのは難しいでしょう。

絞りによる変化

絞りを変えて撮ってみた写真を比べて見ましょう。
セージ セージ
左側の写真はf5.6(絞りを開いた状態)、右側の写真はf16(絞った状態)で撮影したものです。右側の写真のほうが全体的にピントが合っており、くっきりした印象を与えます。しかしながら、左側の写真と比べた場合には、ごちゃごちゃしているとも言えます。写真の上にマウスカーソルを乗せてみてください。中央上部の花の輪郭や、下部やや右にある葉の輪郭が変化していますね。中央の花を主題として見た場合、近くにあるものがハッキリと見えている右側の写真は訴える力が弱いようです。
この二つの写真では、右側の写真のほうが良いと思われる方もいらっしゃることでしょう。好みの問題ももちろんありますが、この2つの写真ではボケによる効果や優劣は強くは出ていません。一つには、写真のサイズが小さめであること、もう一つには、ボケの効果がそれほど強くは出ていないことが理由と言えるでしょう。


更に比較写真です。今度の被写体はセージです。それぞれ、上部の蕾(つぼみ)にピントを合わせてみました。
セージ
絞りとシャッタースピードは、f4.5 x 1/250秒。背景は見事にボケてくれています。これは良い効果ですね。よく見ると、蕾の上部にはピントが合っていても、下部では少しボケているようです。花の上部で、手前側に伸びている部分なそはピントが合わずに強くボケてしまっています。これらは諦めてしまうべきか、それともピントを合わせて撮り直すべきか、悩むところです。上部にある右を向いた花にはピントが合っていますし、同様に、その下の花や、左を向いた花にもピントが合っているので、許してもらえるかもしれません。
セージ
さて、今度の絞りとシャッタースピードは、f15 x 1/20秒。相当きっちりとピントがきており、上部の蕾も全てにピントが合ってくれています。こちらを向いた花も全体にわたってボケずに写っていますね。その代わりに背景のボケが弱くなり、多少ごちゃついた印象を与えるようになっています。上の写真とこの写真、どちらを採用すべきか、微妙なところになってきました。
この写真を撮った日は風があり、シャッタースピード1/10秒ではブレてしまったため、1/20秒でなんとかブレを出さずに撮ったものです。そのせいで、やや露出がアンダーめになっていて、全体にやや暗めで、色合いがかすれた感じになっています。
セージ
そして最後はf19 x 1/6秒。全然駄目です。画面全体がブレてしまっています。風の日だったので被写体ブレですね。無風状態で三脚を立てればちゃんと写せたのでしょうけど。絞りとシャッタースピードは反比例するので、絞り込んで全体にピントを合わせようとしていけばいくほど、ブレ(手ブレや被写体ブレ)の危険が増えていくわけです。
1枚目の写真にだけ、左側を向いた花が写っているのはちょっとした御愛嬌。風のせいです。

前ボケ、後ボケ

ラベンダー
さて、サンプルを見てもらいましょう。一株のラベンダーを絞りを開けて撮影してみました。最初の写真では、手前にピントを合わせています。後方がボケており、これによって、奥行き間を演出することができますね。同じ株の中でも、後方の花は、なんとなくそこにあるのが解る程度です。それよりももっと後ろには、別の株があるんですが、葉の緑色が背景となっているだけで、形は全くわかりません。
この写真はサンプルであるため、構図はあまりほめられません。主題となるべき花が右端に寄っていますし、画面左寄りには下から上まで枝が貫いていますし。

ラベンダー
次のサンプルは、同じ被写体で、多少奥、中ほどにピントを合わせています。ラベンダーの開花状態が見て取れますね。
手持ちだったため、角度が少々ずれていますが、先程の写真(上)と比べて見てください。手前の枝と花が右端にボケて写っているのが解るでしょうか。また、縦に貫いていた枝も随分印象が薄くなっています。逆に、後方にある中央下の花穂は形がわかるようになっています。

ラベンダー
最後に、一番後ろの花穂にピントを合わせてみました。最初の写真ではっきりと写っていた枝や花穂はもはや影しか見えません。一般に「前ボケ」と言われる写真になっています。この3枚の写真の中では、たまたまですが、この前ボケ写真が若干良いようですね。
前ボケを使えば必ずうまくいくわけではありません。何を表現するかによって、ボケをうまく利用するためには、構図も勘案して評価しなければなりませんから。

マクロ撮影における絞り

マクロ撮影では、絞りによる被写界深度の変化の影響は非常に強く表れます。ほんの数ミリ、場合によっては1ミリずれただけでもボケてしまうくらいに。これは、被写体までの距離が小さいための光学的な理由によるものです。更に、狭い領域を撮影するために光量を確保するために絞りを開く必要があるため、これによって被写界深度が浅くなる傾向にあります。

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