ハーブと花の写真講座

視野

カメラのレンズには焦点距離というものがあり、これによって画角が決まってきます。画角という言葉がわかりにくいことと、マクロ撮影の場合の焦点距離はどこまで近付けるかという意味合いが強くなってくるため、ここでは視野という言葉を使って話を進めていきましょう。

実例

例によって実例を用いて見ていきます。
被写体はエルサレムセージ。名前はセージですが、品種的にはセージには属さないというもの。非常に大きな株があったので、これを撮ってみました。

Wide
まずは全体の姿。広角レンズを使ったような写り方をしています。
株の大きさが見えることと、花や葉の色や形もおおよそ確認できるもので、ごく普通の写真になっています。駄目な写真ではないのですが、少なくとも5つくらいは主人公になりそうな花もあり、また、右上には花が集まっている場所もあります。見る側にとっては目移りがし易いかもしれません。全体を漠然と撮るよりはこれらを狙っていった方が良さそうです。
中央のやや右上の花を狙ってみましょう。

Tele
さて、いくつかの目立つ花を避け、選んだ花だけが写るようにしてみました。周囲の花をフレームから外したため、選んだ花はやや右寄りに位置することになりました。左側が少々さびしいものの、先程の写真よりは見せたいものがはっきりしてきています。また、左側にある花は、近付いていくことによって被写界深度が変化したため、うまくボケてくれています。
花の形も見易く、また、葉の形もちゃんと見えています。写真が小さすぎますが、毛が生えている様子や、シルバーの色合いもわかりますね。
たまたま今回選んだ花は周りの花と比べると小さいものでした。更によく見ると、開花前の蕾が2つほど収まっています。

Macro
まだ何となくすっきりしない感じがするのと、いたずら心から、蕾のほうに寄ってみました。ここまで来れば、見せたいものは明確です。と言うより、蕾以外に見るものがありません。ここまでの3枚の写真のうち、どれが気に入るかは人それぞれでしょうけれど、「写真は引き算」と言われるように「不要なものを取り除く」という究極の姿です。
ただ、この写真には問題があります。蕾の下の葉がうまく写っていないこともあり、何の写真だかが解りません。背景もボケているとはいえ、同系色(当たり前です)でごちゃついています。

Macro Angle
今度は角度を変えてみました。同じく「引き算」の原則に則って、背景を一気に整理してしまいました。また、何の写真だか解らないという問題を解決するため、今度は脇役として花を追加してみました。最初の写真からは想像もつかないと思います。この1枚は「視野」というよりは構図そのものですね。
蕾の下の枝がよく見えないので、ボールが浮いている雰囲気なのはやや難があります。ちなみに、最初の写真を見て、もう一つだけ想像してみてください。一体、どういう格好でこの写真を撮ったんでしょうか。

写真は引き算

実のところ、今回説明した内容は、私自身が写真を撮る際に考えている道筋を説明しているものでもあります。まず、全体を眺め、その中から気に入りそうなところを見付け出し、更にそこに近寄って確認していく。そういうやり方もある、ということです。
何しろ、不要なものを取り除いていく。写真は引き算とはよく言ったものです。

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