ハーブと花の写真講座

ライティング

ライティングと言っても、スタジオで撮影するわけではないので、太陽と被写体とカメラの位置関係だけの問題です。順光は被写体に正面から光が当たる場合、逆光は被写体の背面から光が当たる場合を意味します。また、斜光(もしくはサイド光)は被写体の横から光が当たる場合のことです。これらはいずれも、光線が強い、つまり、よく晴れた状況で影響が出てくるもので、曇天などでは問題にはなりません。
ごく普通に写真を撮る場合は、大抵は順光であろうと思います。色も形もはっきりと撮れ、質感も表現することができます。逆光は被写体が暗く写ってしまうこともありますが、うまく使えば良い効果が得られることも多いものです。斜光は最も難しいと言って良いでしょう。ここでは、単純な順光と困難な斜光については簡単に触れておき、主に逆光に関する紹介を行います。

順光と斜光

Saple
ごく普通に、太陽の高い時間帯にマロウを順光で撮ってみました。明るい部分と暗い部分のメリハリがはっきりしており、下の花に上の花や葉の影が落ちています。ややうるさい感じがしないでもないですが、花や葉の形、模様もちゃんと見えています。
この写真では確認できませんが、マロウの場合は花弁の付け根の辺りが(多分蜜が出ていて)、濡れたようになっており、そこで光が反射します。また、葉や花弁が比較的厚く、やや光沢を帯びたようになっています。強い光線下で順光で撮影することにより、これらの特徴を表現することができるのです。順光撮影を積極的に使うべき被写体であると言えましょう。


Saple
こちらは斜光を使って撮ったラベンダーです。ほぼ真横から光が当たっているので、サイド光と呼んだほうが良いかもしれません。横からの光線を使うことで陰影がはっきりとし、立体感を表現できるようになります。ここで選んだ被写体では、もともとの色が濃いため、日が当たっている部分と影の部分との差が過度にならず、落ち着いた雰囲気に仕上がっています。
斜め45度から光を当てる「レンブラントライト」という方法があるとおり、斜光は立体感と雰囲気を与えてくれます。ただし、なかなか難しいことも確かです。ところで、このサンプルは、茶色く枯れた部分があるのがたまにキズの写真ですね。
Saple
これも順光に近い斜光で撮影したもの。ハーブではなく睡蓮です。白い花弁の花に斜めから光を当て、影を使うことで立体感を出すようにしてみました。奥左よりの花弁は光線に対して垂直に立ち、模様も見えないほど真っ白に写っています。これに対して、右側の花弁は光線と平行になっているために光量が少なく、影に近いグラデーションが見えています。
強調したかったのは光と影、これによって異なった表情を見せている花弁のニュアンスですが、いかがでしょう。中心部が凹んでいる花においてのレンブラントライト、というところですかね。

逆光

逆光は是非積極的に取り入れていただきたい手法です。逆光で撮影する場合のコツや効果について述べてみましょう。
Saple
またまた、ハーブではなく睡蓮です。夕焼けではないんですが、水面が黄金色に反射しているのを見付け、撮影したものです。マクロではなく、望遠レンズで池の横のテラスからやや見下ろしながらの一枚。逆光により水面の反射を脇役として使い、ちょっとでも神秘的な雰囲気が出れば、と思ったものです。
普通に撮ったものなのでコツは特に無いんですが、光の角度をうまく選択することにより、手前側の花弁と奥側の花弁とがほぼ同じ程度の明るさにしています。手前側の花弁は光が透けているのがおわかりでしょう。
Saple
ナスタチウム。花弁が薄く、葉はそれなりにしっかりしています。花弁を透過してくる光を捉えたもので、花の撮影であれば、一度はやってみるべき方法です。特に背景が黒くなるようにすることで光を強調することが重要となります。また、花の背景だけではなく、右下の部分にも影を作ることで全体としてのコントラストをより強く訴えるようにしました。
手前左側の葉に影が写っており、通常ならこれは汚い印象を与える危険性もあるのですが、この写真では光線の強さを示しています。
Saple
逆光の最後の一枚はセージ。光の回折という現象により、花や枝の周囲が明るく輝くように見えています。この回折も逆光下においてうまく使うことによりユニークな効果を示すものです。この写真では、真後ろに青く光る何かが写りこんでおり、これはちょっと失敗のようですね。
この写真でも、背景以外にも黒の領域を広く取り、特に右上には何も無い黒が広がっています。この辺りに曖昧に明るいものなどを置くと、折角のチャレンジが無駄になってしまうので注意しましょう。

その他

ここで取り上げたハーブ、マロウやナスタチウムやセ−ジはもっぱら夏の花です。これら夏の花には、やっぱり強い光線が似合うようですね。順光であろうと逆光であろうと、はっきりした陰影が良い効果をもたらすようです。
野外の自然光下でも、本格的にライティングを考えるのであれば、レフ版(反射板:銀や白の板)やディフューザ(拡散スクリーン:半透明の板や布)を使うことになります。たまたまここでは紹介していませんが、レフ版をうまく使いで影を和らげるという方法は効果があります。花の写真であれば、そんなに大きなレフ版も必要ありませんしね。

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